川端康成の「雪国」の冒頭の文章
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
にある国境も上越国境ですが、四万川の源流もまた、上越国境に端を発します。
三国山脈の稲包山を水源とする四万川は、谷を下りながら沢を集め、中之条町を縦断し流下すると、お隣の東吾妻町との境で吾妻川に合流します。
中之条で生まれ、中之条から出るとともに吾妻川に流れを変える。
いうなれば四万川は、最初から最後まで中之条の川なのです。
中之条という町は、八ッ場ダムができたら水没することで有名になってしまった川原湯温泉の最寄り、川原湯温泉駅があるJR吾妻線沿いにあります。
吾妻線や非常に魅力的な橋が多く、橋マニアな私には見逃せない路線です。
はい、以前のエントリでも触れていますが、私は橋マニアです。
たとえばこのような橋たちが大好きです。





1枚目は以前にも紹介した上路式アーチの新旧稲核橋(長野県)。ついでボウストリングトラスの名橋、東雲橋(岐阜県)。産業遺産としても重要な碓氷第三橋梁(群馬県)、床板は抜け落ちたものの、いまだ美しいワーレントラスで見る者を魅了する廃橋・旧柴崎橋(福島県)。最後は国内に数例しか架橋例のない貴重なバルチモアトラス、磐越西線蟹沢橋梁(福島県)です。どーです、橋って素敵でしょ?
<以下チラシの裏>余談ですが旧柴崎橋と蟹沢橋梁は、現道の柴崎橋の上流と下流に位置していますが、実はこの現柴崎橋というのは、東北電力の上野尻ダムの天端を通る道を指します。蟹沢は鉄道マニアと橋マニアに、そして旧柴崎橋は廃道マニアに大変有名な橋なのですが…とりあえず、上野尻ダム頑張れ。超頑張れ<以上チラシの裏>
そんな橋マニア垂涎の吾妻線、一体どんな橋があるのかというと。




後半の2橋は、八ッ場ダムが建設された場合、目にすること自体が不可能になります。
見に行くのでしたら今のうちです。
<またチラシの裏>最近交通新聞社より発売された武田元秀氏の著書「ダムと鉄道」において、第二吾妻川橋梁(新)は「「両岸に4本づつ立つ主塔の高さは41.8メートル。10階建て以上のビルの匹敵するコンクリートの塊の、周囲を圧倒するほどの存在感は、単線のローカル線用の橋の姿とは思えない」と評されている。ほぼ全編を通して客観的事実を淡々と書き連ねている本書にあって、ほぼ唯一の主観が現れる箇所だと思われる。ローカル線に高規格な橋梁はおかしい、と読めてしまうこの文章に反発を覚えるのは橋マニアだけだろうか?<以上チラシの裏>
で、そんな素敵な吾妻線沿線の中之条ですが、中之条ビエンナーレという隔年のアートイベント(次回開催はH25)を開催したり、古くから沢渡温泉、四万温泉などで有名なところです。
近年、野反ダムや白砂川ダム、品木ダムなどのある六合村(くにむらと読みます)と合併し町域が広がり、尻焼温泉、花敷温泉などのいわゆる六合温泉郷も中之条になりました。
なんというか、中之条の地面を掘ったらどこにでも温泉が湧く疑惑すら抱いてしまいますが、そもそも群馬県は全県にそんな疑惑があったりなかったり…w
中之条町は「奥の院 中之条」というキャッチで町全体を売り込んでいる、観光にとても積極的な町でもあります。
そして四万川ダムは、ダム下流公園「日向見公園」と名付けられていることでわかる通り、四万温泉日向見地区の直上流に建っているダムですが、
四万温泉と四万川ダム、ご近所なだけの関係ではないのです。(続く)
拙文をご覧いただきありがとうございます。
現・第二吾妻川橋梁はとても素敵なワーレントラスで、あの華奢さが魅力のひとつだ思います。
新橋梁は確かに堂々たる風格で、圧倒される風景であることは同意いたします。
きつい書き方になってしまったことはお詫び申し上げます。
八ッ場問題で長野原がテレビに映るたびに画面に出たせいで、下手をすると非ダム好きにはあれが八ッ場ダム本体だと勘違いされたのではないかと不安すら抱く不動大橋と併せ、無駄に豪華、無駄に高規格という意見は何度も目にしました。
そのなかで、ローカル線や田舎が昔懐かしい風景をなくすのはケシカラン、という論調があり、私はそれに強い反発を覚えました。
田舎は開発されちゃいかんのか、都会のために田舎で居続けろというのか、そんな馬鹿な話かあるか。と私は思ったのです。
貴著「ダムと鉄道」を繰返し読むうち、八ッ場の項にだけ違和感を感じるようになった原因は、その時の反発を思い出したのが一点。
八ッ場の問題は長期化し複雑になりすぎた上に、政治的な闘争やイデオロギーの問題もあって、一ダム愛好家にすぎない私は、是非を論じる立場にはありません。
しかし、八ッ場の地元長野原は振り回され続けた上に、マニフェスト騒動の際には謂れなき中傷まで浴びせかけられ、同じ群馬県民として大変いたたまれない思いで報道やネット上の騒動を見ておりました。
せめて、生活再建のためのインフラ整備くらいは最高級のものを得たっていいじゃないか。
それだけの代償は払わされ続けたじゃないか、と思ったのが一点です。
吾妻線新線の橋梁を走り抜ける185系の姿を楽しみにしている一方で、水没予定区間の素敵な橋たちを惜しく思う気持ちもあり、私自身も複雑な思いで八ッ場報道を目にしています。
同じくダムと鉄道を愛するものとして、今後もご活躍を期待しております。
ご丁寧なご返信、ありがとうございます。「生活再建のためのインフラ整備くらいは最高級なものを」、まったく同感です。また、吾妻川第二橋梁(新)についても、あの現場に最適なスペック・デザインが施されていることについての適切なフォローなり説明なりがなされていなかった拙文の表現については、反省することしきりです。
八ッ場ダムの章については、出版スケジュールの関連で、前田国交相による「中止の中止」正式表明前に最終入稿を終えなければならなかったという事情もあり、夕顔様を始め、読者の皆様には本当に申し訳ないことなのですが、他の章に比べて表現・論旨・立ち位置が不明確であるというご指摘も頂戴しております。機会ができれば、何らかの対応をすべきだと考えてもおります。
四万川ダム、残念ながら未だ訪れることができずにおります。貴ブログを精読のうえ、なるべく早く、訪問してみたいと思っております。こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。